そもそも、イベリコとは何を意味するのかご存知でしょうか?
イベリコとはスペインとポルトガルが位置する「イベリア半島」を意味しています。
そして、スペイン語ではハム全体を『ハモン』(Jamón)と呼びますが、普段“ハモン”と言うと生ハムのことを意味することが多いです。そんなスペインの生ハムにもいくつか種類があります。
【生ハム『ハモン』の種類】
ハモンセラーノとは「山のハム」という意味で、元々はスペインの山岳地帯で作られていました。また、ハモンセラーノの大きな特徴として、生産効率のよい白豚で作った鮮やかなピンク色のハムということが挙げられます。つまり、ハモンセラーノは比較的安価かつ、さっぱりとした味わいと柔らかな食感が特徴です。
スペインの生ハムの代名詞、黒豚の「イベリコハム」は、イベリア半島在来種の黒豚で作った生ハムです。品格を感じさせる圧倒的な風味と、複雑な味わいが特徴です。また、白豚のセラーノよりも肥育に時間と敷地スペースの手間がかかり出荷されるまでの熟成期間も長くかかることから、価格もハモンセラーノの4~5倍ほどで、スペインで作られる生ハム全体の1割程度と希少価値の高い生ハムです。
また、「イベリコ」を名乗るには豚の純血度が50%以上であることと規定されています。
そんなイベリコハムは与えられる飼料と飼育方法によってカテゴリー分けされています。
【イベリコハムのカテゴリー】
(JamonLoversより引用)
最も評価が高いイベリコハムは『Bellota 100% de Ibérico』(ベジョータ)と呼ばれます。ベジョータとは、スペイン語でどんぐりの意味で、指定された場所のみで放牧された黒豚がどんぐりを食べて放牧されながら成長します。このカテゴリーに入れるのは、全体の0.01% しかいなとも言われる希少な存在です。どんぐりを食べて放牧されることで、濃く深い赤身ができ、よく見ると熟成の証であるアミノ酸の小さな白い結晶が見えます。出来上がるまでに2~3年かかる為、スペインで作られる生ハムのわずか2%ほどです。とても貴重な存在なので当然価格も高くなりますが、一度味わうと忘れられなくなる程にインパクトがあります。
イベリコ豚の中でもどれくらいの割合でイベリコの遺伝子を持っているかによってランクも変わっていきます。100%純血イベリコ種ではないもののどんぐりを食べて育ったものはBellota Ibérico と種類分けされます。
体重増加のため、どんぐり以外の自然飼料と補完飼料を与えられた豚は『Cebo de Campo』(セボ・デ・カンポ)と呼ばれます。屋外や屋根付きの農場で放牧で育ちます。
放牧せず、屋内の養豚施設で飼育され、どんぐりを一度も食べず人工飼料のみ与えた黒豚を『Cebo』(セボ)と呼びます。
スペインの中でも、産地によって気候や飼育肥料にそれぞれ異なる特徴があります。今回は以下の4大産地と呼ばれるスペインの代表的な産地とその地域独特な特徴を紹介していきます。
【イベリコハムの4大産地】
ギフエロはスペインの4つの生ハム産地の中で最も北に位置する地域です。
日本の青森~北海道と同じ緯度に位置しており、年間を通して涼しく乾燥している気候は生ハムの生産に理想的な環境となっています。
味の特徴としてはギフエロ産の生ハムは比較的塩分が控えめと言われています。
そしてイベリコハムの中では最古の原産地呼称として知られ、国内生産量の半分以上がギフエロで生産されているとも言われています。
ハーブゴ村はスペイン・アンダルシア州ウェルバ県南西部に位置しております。他の3つの地域と比較しても温かい気候が特徴であることから、成熟が早く、パンチのきいた味の生ハムを短期間で仕込むことができます。
また、1700年頃に最初の生ハム製造会社がその地に設立されて以来、伝統的な製法と厳格な規定に基づき生ハムの製造が続けられています。
北にはトレド山脈、南にはモレナ山脈が存在し、標高は海抜400mという地形に位置しているエストレマドゥーラ州の生ハムはマイルドな味わいですが、夏場は40℃に達することもあり、その分塩気は少し強くなるようです。
また、カセレス県、及びバダホス県エストレマドゥーラ州産の認定を受けるイベリコ豚は、この地のみで飼育された豚でなければならないという規定が設けられています。つまり、純血のイベリコ豚であっても、その地域外で生まれていた場合や途中で別の土地で育った場合は認定を受けることはできないとされています。
日本の新潟県と同緯度に位置するペドロチェスは1日の寒暖差が激しく、この地域で製造される生ハムは、他の地域で作られる生ハムと異なり、ドングリの甘みとオリーブオイルのような後からくる高い香りが有名で、淡白であっさりとした味わいが特徴です。
イベリコハムの理想の切り分けの大きさは3㎝×4㎝の大きさと言われています。
切り分けが大きすぎると口の中でもたついてしまい、逆に小さすぎると、空気の触れる面積が大きくなり酸化が進んでしまい、鮮度や味が落ちてしまうこともあります。ここではイベリコハム・生ハムの美味しい切り方をご紹介します。
生ハムをスライスする際は、生ハムの味を堪能しやすくすること、さらにスライスした後の扱い方(お皿への盛り付けや適切なタイミングで食べること)を考えることが大切になってきます。また、生ハムの美味しさを十分に堪能し、お皿への盛り付けもしやすい最適な厚さは0.7ミリと言われています。
そのままの生ハムを食べる際は、冷たいままではなく常温にすることがポイントです。
常温にすることで、良質な脂が口の中で溶け、風味が心地よく広がります。バゲットに生ハムを挟んだボカディージョ(生ハムサンドイッチのようなもの)も、上質の生ハムだからこそ味わえる美味しさです。素材の味を堪能するためにサラダなどに加えることもあります。
また、若い熟成で比較的低脂肪のハモンにスペイン産のチーズを組み合わせたり、良質なオリーブオイルを回しかけたりすることもおすすめです。さらに、コロッケやスープなどにも刻んで加えることで、塩気と旨味・コクをプラスすることができます。良質な生ハムだからこそ、そのままでももちろん、料理にプラスするだけでも存在感を発揮してくれます。
このように色々な方法で美味しく食べることができますので、是非日々の食卓にご活用ください。