スペイン料理を語る上で欠かせない存在、それが「ハモン」です。スペインのハモンは、その風味、食感、そして製造過程でのこだわりによって世界中で愛されています。特に日本でもその人気は高まり続けており、多くのスペイン料理レストランで提供されています。この記事では、代表的なハモンの種類であるハモン・セラーノ、ハモン・イベリコ、ハモン・デ・セボ、そしてハモン・デ・ベジョータについて詳しく解説します。
ハモン・セラーノは、スペイン語で「山のハム」という意味を持ち、伝統的に山岳地帯で生産されてきました。豚の後ろ脚を塩漬けにし、数ヶ月から数年間にわたり乾燥させることで作られます。一般的には、白豚(ランドレース種やラージホワイト種)が使用され、その風味は豊かでありながらも、比較的マイルドです。
ハモン・セラーノは、薄くスライスしてそのまま食べるのが一般的です。また、パンに乗せたり、サラダやメロンと一緒に楽しむこともあります。そのまろやかな塩味と風味が、さまざまな料理にアクセントを加えます。
ハモン・イベリコは、イベリコ豚という特別な品種から作られます。イベリコ豚は、スペイン南部のアンダルシア地方やエストレマドゥーラやサラマンカ地方で飼育され、自由に放牧されることが多いです。この豚は、黒い皮と細長い脚が特徴で、その肉質は非常に高く評価されています。
ハモン・イベリコは、その飼育方法や餌によってさらに細分化されます。主に以下の3つの種類があります。
ハモン・イベリコ・デ・ベジョータ:イベリコ豚がどんぐりを主食として育てられ、広大な放牧地で自由に動き回ります。このハムは、どんぐりの油分が豚の脂肪に吸収されるため、特に芳醇で滑らかな味わいが特徴です。
ハモン・イベリコ・デ・セボ・デ・カンポ:放牧されつつも、補助的に穀物や飼料を与えられたイベリコ豚から作られます。風味はベジョータとセボの中間で、バランスの取れた味わいが楽しめます。
ハモン・イベリコ・デ・セボ:イベリコ豚が農場で飼育され、穀物や飼料を主に食べて育てられます。比較的手頃な価格で提供され、その風味は豊かでありながらもバランスが取れています。
ハモン・イベリコは、そのままスライスして食べるのが最も一般的です。その芳醇な香りと豊かな味わいは、ワインとの相性も抜群です。特にハモン・イベリコ・デ・ベジョータは、そのまま味わうことでその深い風味を堪能できます。
ハモン・デ・セボは、イベリコ豚が農場で飼育され、主に穀物や飼料を食べて育てられます。一方、ハモン・デ・ベジョータは、イベリコ豚が放牧され、どんぐりを主食として育てられます。この飼育方法の違いが、ハムの味わいや風味に大きな影響を与えます。
ハモン・デ・セボは、比較的マイルドな味わいで、塩味と豚肉の風味がバランスよく感じられます。ハモン・デ・ベジョータは、どんぐりの風味が脂肪に深く浸透し、非常に豊かで滑らかな味わいが特徴です。そのため、価格もハモン・デ・ベジョータの方が高価になることが一般的です。
スペイン市場には、以下の4つのカテゴリーに分類されるハモン・イベリコがあります:
市場には、これら4つのカテゴリーに加えて、スペインの4つの原産地呼称(DOP)に基づくイベリコ製品も存在します。これらの製品は独自のプレシントで識別されますが、色分けは上記の4カテゴリーに準じています。
ハモンは風味を保つために適切に保存する必要があります。切り口はラップでしっかりと覆い、冷暗所で保存します。また、スライスしたものは冷蔵庫で保存し、早めに消費することが望ましいです。
ハモンは、そのままスライスして食べるのが最も一般的ですが、さまざまな料理に取り入れることもできます。パンに乗せてタパス風に楽しんだり、サラダに加えてアクセントを付けたり、パン・コン・トマテのトッピングとしても絶品です。
ハモン・セラーノ、ハモン・イベリコ、ハモン・デ・セボ、ハモン・デ・ベジョータは、それぞれに独自の特徴と魅力を持っています。スペイン料理レストランで提供されるこれらのハモンをぜひ試してみてください。そして、自分好みのハモンを見つけ、その深い風味を楽しんでください。スペインの豊かな食文化に触れる絶好の機会となるでしょう。