ロスコン:スペインの1月6日のお菓子

スペイン料理
12月も中旬になると、世界のあちこちで、華やいだ装飾やイルミネーションが施され、マーケットがたち、クリスマスツリー点灯式のカウントダウンや有名百貨店のウインドー・ディスプレイに人だかりができます。  カトリックが今も主流のスペインらしい装飾と言えば、ベツレヘムでのキリスト降誕を再現したベレン (Belén) です。聖ヨセフ、聖母マリア、幼子イエスと、天使、東方の三賢王、羊と羊飼い、牛などの像を並べた、ミニチュアから等身大のものまである装飾です。 11月末から1月6日まで、王宮、教会、修道院、歴史博物館、市庁舎や、スペインのどの町にもあるPlaza Mayor (大広場)にも設置され、公開期間が施設や観光情報のウェブサイトなどで告知されます。家の中に飾る人もいて、聖書やキリスト教関連のものを扱う店や、クリスマスのメルカド(マーケット)で、登場人物のミニチュアを買い集めて並べます。ローマから始まり、何世紀も通じてキリスト教の国々に広まりました。 ベレン (Belén) の場面は、 「新約聖書」 によると、東の方でお告げの星を見た3人の占星術者が、キリスト誕生から12日目に、駱駝に乗ってベツレヘムにたどり着き、キリストに会い崇拝を伝え、祝いの贈り物をとどけたとされています。東方とは、バビロン(古代メソポタミアの首都)と考えられ、現在のイラクにあたる地域で、そこから見て西方のベツレヘムはパレスチナ自治区にあります。 1月6日とケーキ キリスト誕生から12日目に当たる1月6日は、公現祭 (スペイン語でEpifanía、キリストが初めて人前に姿を見せた日) と呼ばれ、1月5日には各地でパレードなどが行われます。そのため、スペインでは12月25日だけがクリスマスのハイライトではなく、翌年の1月6日まで続きます。 クリスマスはスペイン語でNavidadと言います。12月中は、伝統的なアーモンド菓子の トゥロン、ポルボロン、マンテカード、マサパンを食べて Navidadを迎えますが、1月5日から6日は、ロスコン・デ・レジェス (Roscon de Reyes) を家族や友人と切り分けて食べます。ロスコンの中には、陶器のミニチュアの人形とそら豆が入っていて、人形が当たった人は6日のお祝いが終わるまで王様として扱われます。一方、そら豆が当たった人は、ロスコンの代金を払ってご馳走しなくてはいけません。 このような遊びを皆で楽しみながら、子供たちはプレゼントをもらって、1日を過ごします。 ロスコン・デ・レジェス、王様たちのリングケーキ ロスコン・デ・レジェスは、小麦強力粉、牛乳、バター、イースト、砂糖、シナモン、レモンやオレンジウォーターを混ぜた発酵生地に、砂糖漬けのフルーツやアーモンドを上に散らしてオーブンで焼いた、ブリオッシュパンの様な生地の、リング状の甘いケーキです。 上下を2つに切って間にクリームやチョコレートクリームをはさんだものもあります。パステレリア(お菓子屋)やパナデリア(パン屋)で買うと、1日王様がかぶる、金色の紙の王冠を一緒にくれます。上に散りばめられている、砂糖漬けにした赤いチェリーや緑のアンゼリカ、オレンジのスライスなど、色とりどりのフルーツと砂糖粒は、王冠の宝石を模しています。  クリームの有り無し、フルーツかナッツか?など、好みは分かれます。サイズやお店により、20ユーロから40ユーロくらいで売られています。スーパーにはより手ごろなものもあります。1日に1000個を売るお店もあります。 ロスコン・デ・レジェスの起源 東方からベツレヘムへキリストに会いに来た3人は、スペインではLos Reyes Magos (ロス・レジェス・マゴス) と呼ばれ、日本語では、東方の三賢王、または三賢人、三賢者と訳されます。 Reyes は王様、Magos は現代的に言えば、一種の占星術師で、魔術を使うように超自然的な力で、目標を達成することができる賢者なのだそうです。東洋人は医者を 「魔術師」 と呼んだとか、ペルシャ語の 「マジシャン」 は 「司祭」 を意味する、という解釈もあります。 「Roscon de Reyes」 を 「Los Reyes Magos」 がベツレヘムに着いた日に食べる習慣の起源についても、いろいろな説がありますが、一致した結論は、それは今日のケーキとは関係がない、と言うことです! 大筋は、紀元前のローマで、今の12月21と22日に当たる冬至の頃、農作業が終わることを祝う祭りに、ナッツ、ナツメヤシ、イチジク、はちみつのケーキを異教徒が食べており、その後キリスト教がローマ帝国の国教になると、ケーキは形を変えながら、キリスト教国で食べられてきました。その間、豊饒や幸運の象徴とされていたそら豆がケーキに入るようになり、18世紀にフランス・ブルボン朝のルイ15世の料理人が王を喜ばせようと金貨も入れてからは、幸運のシンボルはそら豆から金貨、のちに人形にとって代わられます。 ルイ15世はスペインのナバラ国王でもあり、ルイ14世の孫はフェリペ 5世としてスペイン・ブルボン朝の初代国王になったという、当時のフランスとスペインの王たちの密な親戚関係を通じて、多くのことがスペインに伝わりました。 フランスでも1月6日に王様のケーキを食べ、陶器のミニチュアが当たった人が紙の王冠をかぶるという習慣があります。北部からフランス全体の2/3ほどの地域では、ガレットと呼ばれる、真ん中に穴がないパイ生地に、アーモンドのクリームを入れたお菓子ですが、南部ではクーロンヌ(王冠)と言う名前で、オレンジフラワー・ウォーターで風味をつけた、リング型のブリオッシュ生地に、砂糖漬けのフルーツをのせ、砂糖粒を沢山まぶしてあるもので、こちらはスペインのロスコンにとても良く似ています。 陶器のミニチュアは、今日では人形のほか食べ物、動物、自動車など、あらゆる形がありますが、今でもフランス語で 「そら豆」 を意味する 「フェーヴ」 と呼ばれ、幸運の印であるのに対して、スペインではそら豆の方は […]

トゥロン:スペインのアーモンドのお菓子

スペイン料理
12月に入り、スペインでもホリデーシーズンの気分が盛り上がってくる頃、皆が話題にするのは、季節定番のお菓子や贈り物をどこで買うか?ということで、観光やグルメガイドの、お勧めの店5選、とか、パステレリア(菓子店)、グルメ食品専門店や有名百貨店のバスケットに詰め合わせたギフトセットの広告が、ニュースレターやソーシャルメディアに溢れます。 クリスマスはスペイン語でNavidadと言います。トゥロン、ポルボロン、マンテカード、マサパンが、伝統的にこの時期に良く食べられるお菓子で、どれもアーモンドのお菓子なのが特徴です。ギフトセットのCestas de Navidad (ナビダのバスケット) には、これらのスイーツと、イベリコハムやチョリソ(パプリカ入りソーセージ)、スペインワイン、オリーブオイル、チーズのケソ・マンチェゴなどを詰め合わせます。 アーモンドの産地 トップのアメリカとは大差があるのですが、スペインは世界第二のアーモンド生産国です。品質では、マルコナ種がアメリカ産の涙型のものより、丸みと厚みがあり、甘く苦みの少ない風味が良く、フランスや日本でもマルコナ種を指名して使う菓子職人がいる逸品です。また、マジョルカ種はIGP(地理的表示保護)に認証登録されています。そもそも、アーモンドを世界最大の産地カリフォルニアにもたらしたのは、18世紀のスペインの宣教師と言われています。 2月から3月頃、白く桜に似た花が、スペインの街中、郊外、野山のあちこちで咲き乱れているのを見ることができます。アーモンドの実は、9月から10月頃に収穫されます。 伝統菓子トゥロン 数あるアーモンド菓子のなかでも、トゥロンは人気があります。他の国で一般的にヌガーと言われる、皮を剥きローストしたアーモンドを、高温で練った砂糖、蜂蜜、卵白のメレンゲに混ぜ板状にした、とても甘いお菓子です。 トゥロンの種類 トゥロンには、ローストしたアーモンドを、しっかり煮詰めて練った砂糖、はちみつ、卵白と混ぜて、そのまま固めた硬い「ドゥロduro」 (下の写真右) と、その生地をミル(石臼など)で粉砕し、さらにミキサーで練り、成型した軟らかい「ブランド(Blando)」  (下の写真左) があり、この2種類が一番伝統的で知られています。 「ドゥロDuro」は、結構硬いのですが、乾いた、歯にくっ付きそうな生地を噛むと、中に丸ごとまたは半割で、ぎっしり散りばめられたローストアーモンドが、カリッ!と割れて、香ばしさを楽しめます。香草花のはちみつの風味も感じられます。いろいろな形にカットにして、皿盛りデザートやケーキのトッピングにも使われます。 「ブランド(Blando)」 は、しっかりと乳化され、凝縮したペースト状で、クリーミーな食感です。キャラメルのように硬めに粘りを引くことはなく、口の中で溶けます。ナッツの油脂分が高く、味わいは濃厚です。夏にはトゥロン味のアイスクリームも人気です。 ほかにも、マジパン(アーモンド粉と砂糖の生地)に、卵黄を練りこんだ 「トゥロン・デ・ジェマ」、やフルーツの砂糖煮を混ぜ込んだ 「トゥロン・デ・フルータ」、ココナッツを固めた 「トゥロン・デ・ココ」 などの伝統的なものと、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ入りや、ダークとホワイトチョコレートタイプがあります。 トゥロン発祥の地 トゥロンはスペイン全国で作られ、食べられていますが、地中海沿い南部のバレンシア州アリカンテ県で、1996年にIGP(地理的表示保護)に認証登録された 「I.G.P. Jijona (ヒホナ)」 と 「I.G.P. Turrón de Alicante (トゥロン・デ・アリカンテ)」 の2つの産地が特に有名で、ヒホナが発祥の地、とされています。 ヒホナとアリカンテは20キロほどの距離にあります。 「I.G.P. Jijona (ヒホナ)」 のトゥロンは、軟らかい「ブランド(Blando)」 で、「I.G.P. Turrón de Alicante (トゥロン・デ・アリカンテ)」 は硬い「ドゥロduro」 です。 2つのIGPのトゥロンの原材料は、バレンシア州のアリカンテ、カステリョン、バレンシアから調達されます。アーモンドには、スプレマとエクストラの2つのカテゴリーがあり、原材料中のアーモンドの最低含有量が規定されています。軟らかいブランドのヒホナはスプレマが64%、エクストラが52%なのに対し、硬いドゥロのアリカンテはスプレマが60%、エクストラが42%と少し低い規定です。アーモンドの品種は、バレンシアーナ、マジョルカ、マルコナ、モジャール、プラネタ、ラルグエタ、が使われます。ヒホナの硬いドゥロのトゥロンは、表面を極薄のウエハースで覆います。 ヘーゼルナッツの円形のトゥロン 2022年6月には、3つ目のIGPとして、「I.G.P. Turrón de Agramunt (トゥロン・デ・アグラムント)」 が認証登録されました。 産地は、カタルーニャ州レリダ県ウルヘルのアグラムントで、ヒホナとアリカンテのあるバレンシア州同様に、地中海沿いで、その北部に位置します。 はちみつ、砂糖、卵白と、ヘーゼルナッツの塊で作るのが特徴で、マルコナ種のアーモンドが入いることもあります。ヘーゼルナッツとアーモンドの含有量の規定は、どちらも、スプレマが60%以上、エクストラが46%以上です。長方形のものに加え、円形のトゥロンが特徴で、丸い極薄のウエハースで挟まれています。 […]

ソパ・デ・アホ:スペインのにんにくとスープ

スペイン料理
スペインで街を歩くと、あちこちからにんにくとオリーブオイルの食欲をそそるなんともいいにおいが漂って来ます。にんにくは潰したり、薄切りやみじん切りにして、オリーブオイルに香りを付けたり、炒めたり、煮込んだりして、スペイン料理に最も多く使う香味野菜です。 スペイン語でにんにくはアホ(ajo)と言います。 これまでにご紹介した、アヒージョ(ajillo)、パン・コン・トマテ、ガスパチョはにんにくを使った代表的な料理です。パエリャには、まずオリーブオイルを熱して香り付けに使ってから、そのまま他の材料と一緒に調理され食べますし、イカ墨のパエリャや極細パスタのフィデウアのパエリャなら、マヨネーズに似たにんにく風味のアリオリソースとして添えて食べます。 スープや煮込みが美味しくなる寒い季節には、スペイン伝統のメニューが豊富にありますが、その多くににんにくが入っています。暑い季節なら、冷たいにんにくのスープのアホ・ブランコが、トマトのガスパチョと並んで人気があります。 そんな訳ですから、スペイン人の家のキッチンには、数個単位のネット入りや、紐の数珠つなぎで買ってきたままのにんにくが吊るしてあったり、バスケットに積んであったり、素焼きで蓋つきの壷に入れてあったり、どの家でもにんにくを欠かさないようにしています。スペインバルやレストランだけではなく、アパートの建物に入った途端、いつでもにんにくとオリーブオイルのにおいがして、それはもう染み付いていると言う感じです。 スペインでは、生のにんにくのほか、セミドライやドライのもの、加工品は、乾燥にんにくや、スパイス・製薬用のパウダー、オリーブオイルやピクルス液に漬けたものも売っています。にんにくを発酵させた黒にんにくもあり、料理に使うほか、ややドライフルーツのような味わいを活かして、ビスケットなどのお菓子に混ぜて焼いたり、パンと一緒にそのまま食べたりします。 ソパ・デ・アホ (にんにくのスープ) スペインに数あるスープの中で、ソパ・デ・アホは、最もシンプルな伝統料理です。古くは、硬くなったパン、にんにく、オリーブオイルを、水で煮ただけでできる、安上がりで栄養価が高い、庶民が厳しい冬を生きる糧でしたが、19~20世紀には都会で夜遊びのあとに、ブイヨンスープで煮て、卵や生ハムを入れたものが食べられていた記述があります。古風なスープのレシピが、今も多くの料理本に受け継がれています。 ソパ・デ・アホは、中央部カスティーリャ高原、北東部アラゴンの一部、南部のアンダルシアと南西部エストレマドゥーラの典型的なスープですが、レンテハス(レンズ豆)の煮込みと同じように、スペイン中にその土地の食材を加えたヴァリエーションがあります。タラを入れたバスク風、きゃべつ、長ねぎ、トマト、パセリ、ピーマンなどの野菜を入れたマジョルカ風、きのことクミンを入れたソリア風、トマトと胡椒を入れたリオハ風・・・。 他にもまだまだあります。 基本のソパ・デ・アホは、とても簡単に美味しく作れます。日本でも、タパスバルやスペイン料理レストランで食べられますので、これからの寒い季節に、あつあつのソパ・デ・アホを、スペインワインと合わせて楽しんでください。 ソパ・デ・アホの基本のレシピ <材料(4人分)> ・ にんにく                        3片 ・ E.V.オリーブオイル                 大さじ 3 ・ バゲットなどのパン(硬くなったもの)          8切れ(1㎝厚さ) ・ パプリカ・パウダー(甘口)               小さじ2 ・ 水                           600~800ml ・ 卵                           4個 ・ 塩・胡椒                        適量 <作り方> ※ パプリカ・パウダーは焦げやすいので、火を止めて加えます。 ※ 水に替えて野菜や肉類からとったスープや、分量の水に固形ブイヨン1個を加えて煮ると、旨味が増します。 ※ 生ハムの切り落とし(40~80g)を刻んで加えれば、ソパ・カスティリャ-ナ(Sopa Castillana)と呼ばれる、少し贅沢なスープになります。3.のパプリカ・パウダーを加えるタイミングで入れます。 ※ スペインでは卵は溶かずに加え、崩しながら食べますが、溶き卵を入れても良いでしょう。 ※ パンは通常は前日から残ったフランスパンを使いますが、食パンなどを、4等分くらいに適当な大きさに切って入れても作れます。 ※ パンをオリーブオイル、にんにくと一緒に炒めずに、トースターでカリッと焼いて、皿に入れ、スープを注ぎ入れても、違った味わいが楽しめます。 ※ パプリカ・パウダーは甘口のかわりに、辛口を入れることもできます。 ※ シェリー酒を少し加えればさらに風味が増します。 にんにくの産地 世界のにんにく生産は、中国が75%近く、続くインドが9~10%で、この2国が85%近くを占めます。それ以下の生産国は僅かずつですが、スペインは6位くらいで、日本の37位くらいよりもずっと上で、EUでは最大のにんにく生産国です。  スペイン産にんにくは、生産量は世界の1%に満たないものの、輸出量は中国に次ぐ第2位です(8割近くが輸出向け)。日本の生鮮にんにくのおよそ半分以上は輸入品ですが、輸入の90%以上を占める中国産に次いで、スペイン産が第2位で、2021年は約9%でした。つまり日本で流通する生のにんにくの3-5%がスペイン産と言う事になります。 モラード種(紫にんにく)は、一般的な白いにんにくとの違いが目立ちやすいことや、スペインのブランドにんにくのイメージを世界に広める積極的なプロモーションの効果で人気が高まり、2015年に日本でアメリカを逆転して2位になることに貢献した品種で、さらなる伸びが期待されます。 概して、中国産は日本産に比べ、1個も皮の中の粒も小さ目ですが、日本での価格は1/3から1/10程度なので、風味付けや、調味料として気軽に使えます。スペイン産のにんにくは、日本で最も生産量が多く、品質の評判も高い青森産の、丸く大粒で、みずみずしく、フレッシュな果実のようなにんにくと比べても、それほど変わらない大きさで、香り、味、質感も良く、価格では1/3程度でお得感もあります。 スペインのにんにくの産地 スペインのにんにくの生産は、特に中央部から南部で盛んで、中央部からやや南のカスティーリャ・ラ・マンチャ州で全体の半分以上、南のアンダルシア州で1/4程度を生産しています。 カスティーリャ・ラ・マンチャ州クエンカ県のラス・ペドロニェラスには、スペインのにんにくで唯一のIGP(地理的表示保護)に認証登録されたモラード種(紫にんにく)のIGP Ajo Morado de Las Pedroñeras があります。 アンダルシア州は、コルドバ県の生産量が多いですが、1990年代からの比較的新しい大規模農家によるものです。 スペインのにんにくの品種 スペインでは、主に4種類のにんにくが生産されています。 ① ホワイト・スプリング種 中国原産で、栽培しやすく収量が多い品種です。​​サイズが大きく、丸みを帯びた平らな形で、外皮と内皮が白く、10-12粒の果肉は白です。まろやかな味わいです。 ② バイオレット・スプリング種 中国原産で、栽培しやすく一部の地域で生産されています。外皮は白に紫の筋が少しまたは多く入っていて、10-12粒です。 ③ ホワイト種 スペインのいくつかの地域の伝統的な品種です。サイズが大きく、白い外皮で、10-12粒の果肉はクリーム色です。なめらかな味わいです。その乾燥にんにくパウダーはヨーロッパで広く使われています。 ④ モラード種 (紫にんにく) 主にカスティーリャ・ラ・マンチャ州のクエンカ県で生産される、偉大な伝統を持つ土着の品種です。球状で、大きさは中程度で揃っていて美しいです。外皮は白ですが、皮を剥くと現れる紫色の薄い皮の粒が一番の特徴で、8-10粒の果肉はクリーム色です。 ラス・ペドロニェラスという小さな町とその周辺の地区で生産されているものは、2001年にIGP(地理的表示保護)「ラス・ペドロニェラス モラード種(Ajo […]

レンテハス:スペインのレンズ豆

スペイン料理
スペインの食卓に欠かせないのが、白いんげん豆、ひよこ豆、レンズ豆、そら豆の煮込みです。涼しい地方で良く食べるのはもちろんですが、スペイン中の家庭、バル、伝統料理のレストランで食べられています。 豆はスペイン国内で栽培されています。ワインやチーズと違い、豆の産地や生産者を気にすることはあまり無いかも知れませんが、産地によって形、色、風味は違います。例えば、レンズ豆の皮の色は褐色、緑褐色、暗緑色、黒褐色があり、皮を剥いたものは黄色、赤橙色があります。 レンズ豆はスペイン語で「レンテハス(lentejas)」と言います。エストファド(estofado)やギソ(guiso)と言う調理法で煮込むことが多く、一般的にはモルシージャ(豚肉の血入りソーセージ)や、チョリソ(豚肉のパプリカパウダーとにんにく入りソーセージ)、ベーコン、野菜を入れます。豚肉、鴨や野生肉、鶏肉が特産の地方であれば、それを入れた郷土料理になりますし、チョリソにはオレガノや他のスパイス入りのもの、にんにく無しのもの、6か月ほど熟成してより旨味の増したものもあり、味わいに幅を与えます。 レンテハスの煮込みは、見た目は地味ですが、他の乾燥豆と違って予め水に浸けておく必要がないので、家庭でも食べたい時にすぐに作れる、なんでも家にある材料で作れる、寒い時に体が温まる、豆の高い栄養が取れる、といいことづくめで、変わらず人気があります。10分煮るだけで食べられる様になり、サラダにしたり、もう少し煮込めばスープができます。 レンズ豆の産地 世界のレンズ豆の生産第1位はカナダで、4割近くのシェアを占め多くが輸出されます。第2位のインドはカレー用に、多くが自国で消費されます。第3位はオーストラリアで、大半が輸出向けです。この3か国で世界のレンズ豆の生産の7割近くを占め、食料として以外にも、肥料・家畜の飼料になります。 ヨーロッパでの生産量は限られていますが、フランス人はレンズ豆が大好きで、多くの家庭で常備しています。 スペインのレンテハスの主な産地は、スペイン中心部のカスティーリャ・ラ・マンチャ州と、その北部に広がるカスティーリャ・イ・レオン州で、それぞれ国内生産量の70%、25%程を占めます。 日本では昔から大豆、小豆、いんげん豆、金時豆、そら豆、花豆など、多種の豆を塩味・甘味で食べますが、レンズ豆は生産されておらず、主にアメリカからの輸入です。フランス産、スペイン産のレンテハスも、わずかですが輸入されています。 レンズ豆の語源 レンズ豆という名前は、大きさが直径4~8㎜、厚さが2~3㎜で、扁平の形が、ラテン語の「lens(目の水晶体)」の様だから、と言う説があります。日本では「ひらまめ」とも呼ばれています。 メソポタミアの西アジアが原産とされ、徐々に西方のエジプト、ギリシャ、ローマへと伝わったと考えられ、古代ローマ時代から食べられていた記録があります。 DOP(原産地名称保護) とIGP(地理的表示保護) スペインでDOPとIGPに認証登録されている豆類は10あります。白いんげん豆に分類されるものが6銘柄(judias、fabas、他)で、その内のカタルーニャ産の2つがDOP、他の産地の4銘柄はIGPです。ひよこ豆とレンテハス(レンズ豆)のそれぞれ2つはIGPです。 レンテハスの2つのIGPは、どちらもスペイン北西部から北部中央に広がる、カスティーリャ・イ・レオン州のものです。 IGP Lenteja de La Armuña 「レンテハス・デ・ラ・アルムーニャ」 「レンテハス・デ・ラ・アルムーニャ」の生産地は、サラマンカ州の北西部ラ・アルムーニャ地方の38の自治体からなり、統制委員会はサラマンカにあります。 大陸性気候で、真冬は長く−10ºと寒く、夏は非常に短く35ºCになり暑く乾燥しています。標高は平均800~900mで、年間降水量は少なく、水資源は少なくトルメス川のさまざまな支流に流れ込む水路に限られます。土壌は深く肥沃です。種まきは秋の10月頃、収穫は6月末から7月中旬です。 栄養価と品質 ラ・アルムーニャ産レンテハスは、タンパク質、繊維、鉄分、カルシウムが際立って豊富で、分析された全ての市販品の中で、タンパク質は最も多く、カルシウムは他の品種より50%多いことがわかっており、とても品質が高いです。 食用の乾燥レンテハスは、薄緑色で、少し斑点があり、大きさは直径は5~7mmで中位ですが、最大9mmで他の種類のレンテハスより少し大きいものもあります。「エクストラ」「ファースト」のランクがあります。 表面は滑らかで繊細ですが、調理しても薄い皮は崩れたり溶けたりしないので、透明で風味豊かなスープになります。ほかの食材を加えてさらに調理しても、豆の味わいがしっかり感じられます。食感はきめ細やかで、柔らかい皮はざらつかず良い口当たりです。 IGP 「レンテハス・デ・ラ・アルムーニャ」の公式サイト(スペイン語)に、基本の煮込みのレシピと、郷土料理のバリエーションが紹介されています。 日本には、スペインの美味しいチョリソ、モルシージャ、ハムが沢山輸入されていますので、レシピを参考に、レンテハスの煮込みを作って、スペインらしい味わいをぜひ楽しんで下さい。 レンズ豆の煮込み <材料(4人分)> ・ アルムーニャ産のレンテハス               300g ・ にんにく                        1片 ・ 玉ねぎ                         1個 ・ トマト                         1個 ・ パン粉                         大さじ1 ・ オリーブオイル                     大さじ6 ・ 塩ベーコン                       75g ・ チョリソ                        75g ・ ハム                          75g ・ 塩                           適量 ・ 胡椒                          適量 ・ パプリカパウダー                    適量 <作り方> ※ 材料はお好みで。じゃがいもも良く合います。 ※ 1に、モルシージャ(豚肉の血入りソーセージ)、小麦粉を加えれば、ブルゴス風です。モルシージャは柔らかいので、盛り付ける時に崩れないように気をつけます。 ※ 1に、にんにく、酢を加え、揚げたパンのスライスを添えれば、マドリッド風です。本場ではカンデールと言う種類の小麦粉のしっかりした質感の伝統パンを使います。 ※ 1に、炒めた玉ねぎ、にんにく、パセリを加えて煮込み、塩・胡椒して、火を止めたら、酢で溶いた生の卵黄を加え余熱で火を入れ、盛り付けます。 ※ レンズ豆と肉に、千切りレタス、玉ねぎのみじん切り、クローブ、ハーブを入れて煮込み、ハーブを取り除いてから、大さじ1杯のバターとクリームを加え、揚げたクルトンを添えれば、フランス風です。 ※ ベーコン、人参、玉ねぎ、にんにく、ブーケガルニ(タイム、セロリ、ローリエ、パセリなどの小枝)を煮ます。水分を切り、ブルゴーニュ・ワインを加えて沸騰させれば、フランスのブルゴーニュ風です。 ※ ベジタリアンなら、レンズ豆と人参、玉ねぎ、にんにく、蕪、ピーマン、セロリなどを、炒めずに生から煮ます。 I.G.P. Lenteja de Tierra […]

アヒージョ:スペインのにんにく風味タパス

スペイン料理
アヒージョは、 具材をオリーブオイル、にんにく、赤唐辛子と一緒にふつふつと煮てその風味をつけた伝統料理で、スペインバルやスペイン料理のレストランの定番メニューです。日本では海老やマッシュルームのアヒージョが最もポピュラーですが、スペインでは鶏肉、うさぎ肉も人気です。 スペインのにんにくも、スペインのオリーブオイルも、質、量、ともに世界に誇る農産物ですから、シンプルでありながら、最高の一品になります。 ほかにもスペイン各地方の特産品や旬の食材のアヒージョがあり、たとえば、貝、蛸、魚の稚魚、白身魚、野菜、きのこ、アスパラガスなどです。肉や魚は仕上げに白ワインやヴィネガーで煮込むものもあり、シェリー酒であれば、スペインならではの風味が香る一皿です。 スペイン語でにんにくはajo(アホ)です。 al ajilloで調理法がにんにくの風味をつけたものであることを表します。 スペインでは 「食材名+アル アヒージョ」 が正式な料理名で、海老なら gambas al ajillo、マッシュルームならchampiniones al ajillo となります。 本場のタパスバルや気軽なスペインレストランでは、直径12㎝くらいの casuela (カスエラ)と言う陶器の皿を、直火にかけてぐつぐつと煮たものが、熱々でテーブルに運ばれて来ます。 タパスバルでは小皿料理ですが、レストランでは鶏肉やうさぎ肉をお皿に盛り付けて、メイン料理として供されることもあります。 作り方はとても簡単で、スペインでは自分の家で料理するのも一般的です。 陶器のカスエラがなくても、厚い鉄の小さなフライパン(スキレットや南部鉄器など)、ホーローのココット、その他の直火対応の耐熱容器で代用できます。海老の殻向きや背ワタを取るのが大変という方には、冷凍海老でも美味しくできます。 缶詰や、スペインバルやデリの調理済み真空パックを買ってきて、容器に移して火にかけたり、湯煎にして温めるだけでも、手軽にアヒージョが食べられ、アウトドアでも大いに活躍します。 日本でも、すっかりおなじみになり、多くのタパスバルやスペイン料理レストランで楽しめます。 日本でピンチョスを拡め、CEJでもご紹介しているL’ESTUDI レ・ストゥディ、BIKINIチェーン店のBIKINI MEDI、BIKINI PICAR、BIKINI 赤坂のジョゼップ・バラオナさんは、著書 『アヒージョ! ajillo!』 (柴田書店)で、アヒージョ風味に合いそう、とイメージできる食材であればなんでもつかえる、と書いています。和食材や創作的なものも含めて、なんと60近いバリエーションのレシピを紹介しています。 バゲットなどのパンや、薄くスライスしてトーストしたパンに、具材をスプーンですくって載せて食べるのがスペイン流です。お皿に残った、にんにくと赤唐辛子と具材の旨味がしっかりと染み込んだオリーブオイルは、パンを浸してきれいに食べるも良し、茹で野菜やサラダや魚のカルパッチョ、パスタや、炊いた白いご飯にかけても相性抜群です。 最後まで余すところなくいただきます。 アヒージョは冷めても美味しく、余ったら翌日のサラダに加えたり、ピンチョスや冷たい前菜としていただけます。 アヒージョの楽しみ方は無限大です。 これからの寒い季節に、あつあつのアヒージョをスペインワインと合わせて楽しんでください。 CEJのホームページには、国内のスペイン料理レストランやバルのリストがありますので、ぜひそれぞれのお店のアヒージョを食べ比べてみてください。 海老のアヒージョの作り方 <材料(タパスサイズの小皿1つ分)> ・ オリーブオイル               40ml ・ にんにく                  1片(小2片) ・ 赤唐辛子・鷹の爪              1本(小2本) ・ 甘海老                   60~80g(8尾程) ・ 塩                     適量 ・ イタリアンパセリ(葉を刻む) ・ バゲットなどのパン <作り方> 甘海老の頭を外し、殻を剥き、背わたを楊枝などで取り除きます。 カスエラまたは鍋に、オリーブオイル、にんにくを入れて弱火にかけます。 15秒程で、にんにくがプチプチ言い始めたら、弱火のまま、赤唐辛子を入れます。 約1分後、にんにくがきつね色になったら、海老(または他の具材)を入れます。 一旦温度が下がるので、火力を少し強め、軽く塩をふり、オイルがふつふつと泡立っている状態を保ちながら、さっと煮ます。 火からはずして、フレーク状の塩と、刻んだパセリを振りかけます。器が熱くなっているので、火傷しないように気をつけましょう。 ※ オリーブオイルは、香りがニュートラルな普通の(ピュアな)ものを使います。 ※ 「にんにくのオイル風味」 を最大限にするために、にんにくをじっくりと過熱することが決め手です。すぐに焦げてしまわないように、少し厚めにスライスします。芯は取り除きます。 鶏肉やうさぎ肉など、白ワインで少し長めに蒸し煮にするものでは、にんにくはつぶしてもOKで、ホクホクした食感を楽しめます。みじん切りは風味をより感じることができますが、焦げやすいので注意してください。 ※ 赤唐辛子は4等分にすれば、オイルにより均等に味が付きます。 ※ 加熱に時間がかかる具材は、予め茹でたり、ソテーしたり下ごしらえをしてから、アヒージョにします。ソテーしてフライパンに出た焼き汁も、アヒージョに入れて旨味を全て活かします。 ※ オイルの量は、具材が軽く浸る程度で、調理の器により加減します。 ※ 火の通りがムラにならないように、大きな具材はカスエラの中で一つ一つ裏返し、小さな具材はよく混ぜます。  ※ オイルは常にふつふつと泡立つ状態に保ちます。 ※ 火の入りやすい魚介類などは、30秒から1分の短時間で、熱と香りが全体にからむように、火からはずします。 […]
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