スペイン料理

ガスパチョとサルモレホ

スペインの冷たいトマトのスープ スペインで最もポピュラーな冷たいスープと言えば、ガスパチョです。 古くから伝わるトマトと野菜のスープですが、伝統的なレストランやバルだけでなく、モダンなレストランやカフェでも、メニューに載っているところがあります。デリではテイクアウト用の透明なカップに入れて売られていますし、スーパーやデパ地下で、牛乳のようにパック入りのものを買うこともできます。自分の家で料理するのも一般的です。 今や、世界中でその名前は知られるようになり、スペイン料理という枠を超えて、フランスや中南米などでも、オリジナルのガスパチョをレパートリーにしているシェフがいます。日本でも、検索すると、レシピが沢山出てきて、浸透ぶりがうかがえます。 スペイン映画から見えるガスパチョ 引用元:Amazon | 神経衰弱ぎりぎりの女たち [DVD] | 映画 スペイン映画界の巨匠、ペドロ・アルモドバル監督の、30年ほど前の出世作 「神経衰弱ぎりぎりの女たち」 という映画の中で、ガスパチョが出てくる場面が3回あります。まずカルメン・ラウラ扮する、不安とイライラをかかえた女主人公が、マドリッドの自宅のキッチンで、雑にトマトを切り、出来たばかりのガスパチョをミキサーから、いきなりぐいっと飲むシーンです。  そして、別の日に彼女の家に友人たちが集まっていると、事件が起こり、動揺した1人が、からからの喉をうるおそうと、あわてて開けた冷蔵庫にガスパチョを見つけ、これまた大きなピッチャーから直に一気飲みをするシーンです。 最後は、恋敵と捜査目的の2人の警察官が家に押し入って来て、彼らにガスパチョを振舞うシーンです。 この大胆さには圧倒されてしまいますが、実はこれは、スペイン人の生活の中でのガスパチョというものを、よく表しているかもしれません。 スペインの夏はとても暑い! ぐったりして、火を使う料理をするのは嫌だけれど、ガスパチョなら、トマト、きゅうり、ピーマン、玉ねぎ、にんにくを、水、オリーブオイル、酢と一緒にミキサーに放り込んで回すだけです。 仕事や子どもの送り迎えで時間がなくても、料理が面倒でも、短時間で作れる上、色の濃い野菜のビタミン、にんにくの滋養強壮効果、オリーブオイルの抗酸化作用などが得られます。 今で言う、地中海式ダイエットにも通じています。 招かれざる客に対してさえ、ガスパチョを振舞うとは、日本で言えば、お茶を出すような感覚の飲み物なのでしょう。 ガスパチョはレストランや自宅のテーブルに座って、スープ皿とスプーンで「食べる」ものとは限りません。コップで「飲む」ことができるくらいの、さらっとした濃度です。 そして、夜が更けるまで仲間とわいわい楽しむのがスペイン流で、長いスペインの一日の、栄養補給になります。 このような、手軽さと、スペインの気候風土にあった飲み口が、根強い人気の理由なのでしょう。 ガスパチョの起源 いろいろな研究を大筋でまとめると、古くはローマ帝国の時代に水に浸した古いパン粉のスープを食べる習慣がありました。イベリア半島で最後のイスラム王朝として、スペイン南部アンダルシア地方のグラナダを統治したナスル朝(1230年~1492年)の歴史的文書に、アラブ人がパン、油、酢だけのスープを野外で楽しんでいたと記されていました。イベリア半島の他民族の羊飼い、兵士、農民なども、乾いたパンを水に浸して手で潰し、にんにくを潰したものや、玉ねぎのみじん切り、油と混ぜて食べていました。 15世紀から始まる大航海時代の16世紀頃、中南米、特にメキシコとペルーから、トマトやピーマンの原種の唐辛子がスペインに入って来るようになると、それらも混ぜて食べました。 パンが焼かれたのはせいぜい週に1度くらいの時代には、パンは硬くなり、水分で柔らかくしなければ食べられなかったでしょう。大航海時代、アンダルシアの港湾都市セビリアが栄え、トマトやピーマンなど新大陸からの野菜はこの地にもたらされました。港町のウエルヴァや、コルドバ、マラガなどの周辺はワインの一大産地でしたが、当時はワインを安定化するのは難しく、酢(ワインヴィネガー)ができ多くあったと考えられます。そしてスペイン南部はオリーブの主要な産地です。 こうしてアンダルシア地方でガスパチョの原型が生まれたと言うのは、うなずけます。19世紀初頭には、質素ながら栄養価が高いガスパチョは、暑いアンダルシアの農民と日雇い労働者に欠かせないものでした。 以後、発展を遂げ、スペイン中で季節を問わず食べられる国民食になりました。パンはもはやメインの材料ではなく、入れずに作る、あるいはとろみをつけたい場合に少量入れる程度になっています。高級ホテルや星付きレストランなどでは、美しく盛り付けられたガスパチョが提供されています。 トマトの半分くらいの分量を、すいか、いちご、桃などの季節のフルーツに置き換えてつくるガスパチョのバリエーションも人気です。 もう一つの冷たいスープ サルモレホ ガスパチョとよく似た冷たいスープにサルモレホがあります。ガスパチョと同様、生まれたのはアンダルシア地方ですが、特にコルドバと言われています。違いは、材料がパン、トマト、にんにく、E.V.オリーブオイル、酢、塩だけで、ピーマン、きゅうりや水を入れない事。パンをたっぷり入れるので、スープというよりも、もったりとしたピュレ状で、スプーンやパンですくって食べます。 サクサクに揚げた茄子にソースのようにつけて食べてもとてもよく合います。トッピングは、ガスパチョが、刻んだ野菜とパンのクルトンを添えるのに対して、サルモレホは刻んだ固茹で卵と生ハムを散らし、オリーブオイルを回しかけます。  皆さんもぜひ、スペイン料理のレストランやバルで、食べ比べを楽しんだり、自分で食材やトッピングにアレンジを加え作ってみてください! ホームパーティーやイベントにもぴったりです。 ガスパチョのレシピ <材料(3-4人分)> ・完熟トマト                                   1 ㎏ / 8個 ・にんにく                                       1片 ・ピーマン                                    80g / 2個 ・玉ねぎ                                           40g  ・きゅうり (皮を剥く)            80~100g / 1本
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