タパス/ピンチョスの起源とは?
タパスの”tapa”という言葉はアンダルシア地方の言葉に由来しています。現在ではスペイン全土で使用されるようになった言葉で、まさにスペイン料理を表現する言葉の一つとも言うことのできる言葉です。タパスとは、バルにおいて、お酒などの飲み物と一緒に楽しむおつまみのような前菜の位置づけの小皿料理のことをいいます。
古くは、家庭においておもてなしの礼儀の一環として、お酒などの飲み物をお客様へふるまうにあたり、塩分が多く喉が乾くことによってお酒をたくさん勧めやすくするためにあった習慣でしたが、現在ではそのような使われ方はされず、バルなどにおいてお酒などの飲み物を注文するとおつまみとして出てくる小皿料理という定義へと変化しました。
よって、お酒などの飲み物がなくてタパスはある、もしくはタパスはないけれどもお酒などの飲み物はあるという組み合わせが不可能な程、両者は非常に密接な関係にあります。
また、このタパスの”tapa”という言葉はスペイン語の”tapar(蓋をする)”という言葉に由来しています。タパスは薄くカットしたフランスパンを伴うことも多く、このフランスパンをワイングラスの上に蓋のようにして被せて使用することにより、ハエなどの虫やホコリがグラスの中に混入することを防ぐ役割もかつては風習として存在したとされています。
ピンチョスは現在では広くスペイン全土に普及していますが、その起源はバスク地方にあります。ピンチョスはスペイン全土においてはpinchosという表記、オリジナルのバスク語表示においてはpintxosという表記になります。
ピンチョスはタパスより歴史は浅いものの、バスク地方において瓶詰め食材を串に刺して提供したのが始まりと言われていたり、タパスをアレンジする形でバスク独自の食材も合わせて使用し広まっていったものとも言われています。このピンチョスという言葉には”串”という意味があり、そのためにピンチョスは串に刺さった状態で提供されるもののことをいいます。バスク地方の中でも特にサンセバスチャンは、バルをハシゴしながらピンチョスを食べ歩くことで非常に有名な街であるため、多くの有名なバルがひしめき合っています。
タパスとピンチョスの違いとは?
タパスとピンチョスはどちらも似たようなものに感じられるかもしれません。しかし、両者にはそれぞれ特徴があり、違いがあります。
- 全般的にタパスはナイフとフォークを使って食べることが多いですが、ピンチョスは必ずしもそうではありません。
- タパスは大皿料理を小さくしたような印象です。煮込みシチューなどのお料理もタパスとなると小皿で小さく盛られて提供されます。大皿に作られた料理でも一人分の量にして提供するというような印象です。その反面、ピンチョスはお取り分けができるような料理形態ではありません。例えば、小さなクリームパイ1つであったり、薄切りにしたフランスパンにポテトサラダやアンチョビを上にのせトッピングしたという感じで、串で刺された状態で提供されます。
- 伝統的に述べると、ピンチョスは立ったままの状態で立ち食いをするイメージで、タパスはお席に着席していただくというイメージです。
- スペインにおいてピンチョスは軽くつまむというイメージで、タパスはそれよりもつまんで尚且つ食事もするというイメージで区別されることもあります。
- ピンチョスはタパスとは異なり、バルのカウンターに種類ごとに並べて展示されていることが多いため、その盛り付けや見た目の美しさも集客につなげる大きな要素となります。
無料で食べられるタパスとは?どこにあるの?
スペインの一部の都市においては、お酒などの飲み物を注文するとタパスが1つ無料で提供されるというシステムを採用しています。このことからスペイン語には”tapear(タパスをつまみ店をハシゴする)”という言葉があるくらいですから驚きです。
地域ごとに提供されるタパスの内容は異なりますが、一般的にはシンプルで実用的、かつ安価な料理が提供されます。以下のようなカテゴリーがあります。
最初に、すでに準備されているもの:
ナッツ、チップス、オリーブ、ハム、缶詰、チーズなど。
次に、簡単に作れるもの:
アリオリポテト、エンサラディージャ、煮込み料理、サラダ、スープなど。
そして、揚げ物:
コロッケ、魚のフライ、ブラバス、エビフライ、ムール貝のフライなどです。
各地域には独自のタパスがありますが、全体的には多様性があり、どの地域でも楽しくタパスを楽しむことができます。以下に、飲み物と一緒に無料でタパスが提供される都市をいくつか紹介します。
それにしても、飲み物と一緒にタパスが無料でいただけるとは嬉しいですね!スペイン旅行の際には是非色々なバル巡りをしてみたいものです!
<タパス無料10都市一覧>
- グラナダ (Granada)
グラナダには、アルハンブラ、アルバイシン、ヘネラリーフェ、サクロモンテなどの名所がありますが、最も有名なのは豊富なタパスです。例えば、エル・タブロンでは、わずか数ユーロでビールとベーコンエッグのタパスが楽しめます。エル・アレナルでは、最初のビールでロモとフライドポテト、次のビールでイカとキャベツ、さらに次のビールでハンバーガーが提供されます。
もしお腹があまり空いていなくて、上品な味を求めるなら、アリアタール・ロス・カラコレスでエスカルゴを試してみてください。また、オムカでは、クスクス、サルカ、ブレワットやタジンなどのアンダルシア料理が楽しめます。グラナダには海がありませんが、ロス・ディアマンテスでは美味しいフライドフィッシュやアサリが提供されます。
- レオン (León)
レオンの中心部、特にウメド地区やロマンティック地区では、飲み物と一緒に無料のタパスが提供されます。フレチャソではスパイシーフライドポテト、ラ・コンペテンシアではピザ、レボテではコロッケが有名です。ロマンティック地区では、カマロテ・マドリードでサルモレホ、パハリンでトラウトスープが楽しめます。最後に、プラサ・デル・グラノにあるラ・ピコネラを訪れてみてください。
- サラマンカ (Salamanca)
サラマンカでも、飲み物と一緒に無料のタパスが提供されます。さまざまな種類の小皿料理が楽しめるこの街では、地元の味を堪能できます。
- アビラ (Ávila)
アビラでは、伝統的なタパスが飲み物と一緒に無料で提供されます。地元の風味豊かなタパスを楽しむことができます。
- セゴビア (Segovia)
セゴビアでも、飲み物と一緒にタパスが無料で提供されます。各バルで特色あるタパスを味わえます。
- アルカラ・デ・エナレス (Alcalá de Henares)
アルカラ・デ・エナレスはマドリードにあります。マドリードでは通常無料のタパスが提供されることは少ないですが、この世界遺産の街では飲み物と一緒に無料のタパスを楽しむことができます。この伝統を楽しむために多くの人が訪れます。
- ハエン (Jaén)
ハエンの多くのバルでは、飲み物と一緒にタパスが提供されます。豊かな食文化を堪能できます。
- アルメリア (Almería)
アルメリアでは、多様なタパスが飲み物と一緒に無料で提供されます。地元の味を楽しむことができます。
- カセレス (Cáceres)
カセレスでも、多くのバルで飲み物と一緒に無料のタパスが提供されます。美味しいタパスを楽しむための絶好の場所です。
- ルーゴ (Lugo)
ルーゴでは、飲み物と一緒にタパスが無料で提供されるのが一般的です。地元のバルでは、バラエティ豊かなタパスが楽しめます。
バジャドリッド (Valladolid) 国際タパスコンクールとは?
毎年行われる恒例行事で、世界中から集まったシェフたちが手の込んだタパスを作ります。コンクール開催期間中は実際に市内のバルにおいて、コンクールに出品されるのと同じタパスが提供されるという魅力的なイベントです。
このコンクールでは、毎年大変見た目にも味にも美しく美味しいタパスが誕生しており、そのクオリティはもはや芸術品と呼べる程。公式ホームページでは過去に賞を獲得した美しいタパスの写真を見ることができます。