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スペインのチーズ

スペイン料理
スペインにはおよそ200種類のチーズがあると言われています。 世界を見ると、出所で統計の値と新しさに幅があり目安としてになりますが、年間生産量は、365-400種類のチーズがあるというフランスがおよそ190万トンで世界3位、スペインは20数万トンで約18位、日本は10数万トンで32位あたりに位置します (source atlasbig)。 1人当たりの年間消費量は、フランスが20キロ後半から30キロくらいで1位、スペインは約8キロで、EU平均の約20キロより少なめです。日本は2014年の2.2キロから増えてはいても、2021年は2.7キロですから(農水省)、スペインはその3倍近くのチーズを食べています。 スペインのチーズの歴史 新石器、青銅器、鉄器時代の遺跡の発掘で、多くのチーズ造りの器具が見つかり、羊飼い、農民、庶民が自分で食べる粗野なチーズを作っていたと思われます。中世には、余れば村人や、北西部のサンティアゴ・デ・コンポステラ大聖堂を目指す巡礼者に売りました。1970年代、大手の乳業メーカーが大都市へ供給するため、チーズの工業製品化を進め、村で職人が作る伝統的なチーズとは違う製造・流通が始まりました。チーズの消費は拡大しましたが、模倣品が増えて、土地ごとのチーズの個性は曖昧になりました。重労働で、低収益の羊飼いや農家が仕事をかえ、村のチーズが消えました。2000年頃、国の経済発展で美食のトレンドが大きく変わり、職人製のチーズへの回帰が起こりました。伝統的なチーズを継ぎ、模倣品と区別するために、DOP(原産地名称保護)とIGP(地理的表示保護)制度に力を入れました。2021年末に認証登録がある、202食品目で(ワインなど飲料は別分類)、オリーブオイルの31(15.3%)に次いで、29のチーズは2番目に多く(14.4%)、重要な食文化です。 若い職人たちが途絶えたチーズを復活させ、新しいチーズを生み出しています。地方のチーズのコンテストも盛んです。 スペインのチーズの特徴 原料乳は、牛乳、羊乳、山羊乳があり、他の生産国より、羊乳のチーズが多く、2~3種の混乳のチーズは珍しいです。地形と気候によって、17州の乳種が違います。 羊乳と一言で言っても、羊の種が違えば味わいも違います。羊は原産種のマンチェガ、メリナ、ラチャの他、カステジャーナ、チュラは乳量が多めで、アルカレニャ、カナリア、ギラ、モンテシナ、リポセジャ、タラベラナ、と言う種がいます。 ブルーチーズは、北部沿岸のアストゥリアスとカンタブリアの、自然の洞窟で作られ、場所が明かされていない洞窟もあります。カスティーリャ・イ・レオンと合わせて3州のみです。 腐敗防止のためや、地元食材を活かすため、外皮にオリーブオイルを塗ったもの、パプリカパウダーをまぶしたもの、赤ワインに漬けたり、生地に加えたもの、などのチーズにスペインらしさがあります。 チーズと気候と土地環境 フランスのナポレオン1世の「ピレネーを超えればアフリカ」、と言う言葉は有名です。フランス革命で、王座と命を奪われたルイ16世も「ヨーロッパと呼んでいいのはピレネー山脈まで」と言ったそうです。確かに標高3,000メートル強のピレネー山脈の南沿いは降水量の少ない山岳地帯で、牛が生息、移動するのも、牛の餌である牧草が生えるのも厳しく、その気候と地形に適合できる山羊や羊が主な家畜になりました。 夏は暑く冬は寒い内陸部の平原は乾燥地帯で、ほとんどの家畜が羊です。 カンタブリア海に面する北部と大西洋にも接する北西部は、降水量が豊富なスペイン最大の牧草地 「緑のスペイン」で、牛の牧畜が可能で、ほとんど牛乳製チーズです。 イスラムの歴史が残したもの 2人のフランス人の言葉の意味は、スペインは711年から1492年まで700年以上、衣、食、建築、医学で、アラブ・イスラム文化の影響を受けたことにもあります。豚肉を食べない生活の糧は、羊料理、羊乳のチーズ、羊毛で、イスラム教徒を追い出したキリスト教徒に引き継がれました。 DOP(原産地名称保護)とIGP(地理的表示保護) スペインで作られている約200種類のチーズの、26がDOP、3つがIGPです。  最初の認証登録は、ナバラ州のロンカルで、1981年にスペイン国内のDOを取得、1996年にEUのDOPへ移行しました。1988年の7つから徐々に増え、2000年頃から加速して2005年に24になり、少しずつ増えています。最新では、2020年2月にカスティーリャ・イ・レオン州の羊乳の、Queso Castellano がIGPになりました。現在、エストゥレマドゥラの Queso Acehúche がDOPに申請中です。 29のDOP・IGPチーズは、国内全生産量の一部で、伝統的な製法や規定を厳密に守りオリジナリティがあることを示すものですが、それ以外のチーズにもすばらしいものがあります。 17州のDOP・IGP チーズ 全てのDOPとIGPチーズの写真と生産州が上の図で見られます。番号は下のリストと同じです。17州のうち、アラゴン、バレンシア、マドリッド、アンダルシアの4つの州には、認証登録がありません。2つは2州にまたがり、IGP Queso Los Beyos は、アストゥリアスとカスティーリャ・イ・レオン、DOP Idiazábalは、バスクとナバラ州の両方で作られています。 北西部ガリシア地方は牛乳製チーズの王国で、他の州では羊乳が多く、山羊乳、牛乳との混乳も多いです。 (1) ガリシア:4 ① DOP Arzúa-Ulloa 牛乳 ② DOP Cebreiro 牛乳 ③ DOP Queso Tetilla 牛乳 ④ DOP San Simón da Costa 牛乳 (2) アストゥリアス:4+1  ⑤ DOP Afuega´l Pitu 牛乳 ⑥ DOP Cabrales […]

トルティジャ – じゃがいものスペインオムレツ

スペイン料理
スペインを代表する料理と言えば、パエリャ、ガスパチョ、トルティジャ、があがります。中でも、トルティジャは、日常的に食べている国民食でしょう。どこのバルにも朝・昼・晩にあり、出来立ても、冷めても、美味しいです。美食評論家たちは、スペイン伝統料理のシンボル、食文化のアイコン、宝石と言い、トルティジャを使ったことわざがいくつもあります。1999年からは、美食の地サンセバスチャンで、トルティジャ・チャンピオン大会が開催されています。ソーシャルメディアでは、トルティジャ・クラブなるものに毎日、自慢の写真やレシピがアップされています。 トルティジャとは 材料は、じゃがいも、卵、E.V. オリーブオイル、塩です。玉ねぎを入れるか入れないかは、家庭、料理人の間で、意見が分かれます。真丸く、2.5~4センチくらいの厚みがあり、どっしりとしています。スペインの有名シェフ達は、新鮮で良い材料を使うこと、火入れに気を配りゆっくりと焼くこと、を強調します。 卵液が少し残るjugoso(ジューシー)の状態のものが多いですが、もう少し焼いたものもあります。 基本のトルティジャ <材料 直径25㎝> じゃがいも                                  750g / 中6個 卵                                                8個 E.V.オリーブオイル                               200~300ml 塩                                                適量 <作り方> 洗って皮を剥き、2~3ミリに薄く切ったじゃがいもを、焦げ付かないフライパンに入れます。 E.V.オリーブオイルを注ぎ、中火にかけ、じゃがいもが油分を含み軟らかくなるまで、「煮る」ようにゆっくり火を入れます。 余分な油はへらで押さえてしぼります。 ボールで卵を良くほぐし、じゃがいもを加え、へらで軽くつぶすように合わせ、塩を混ぜ、1~2分馴染ませます。 焦げ付かないフライパンに流し込み、弱~中火にかけ、円を描くように揺するとすべるようになったら、フライパンより少し大きい皿、または*木製で片側に取手の付いた専用の蓋を被せて、上下を返し、中身を皿に移します。 じゃがいもと卵を皿からすべらせてフライパンに戻し、ゆっくり火にかけ、裏面もすべるようになり、軽く色が付くまで焼きます。 皿をフライパンに被せ、ひっくり返して盛り付けます。 ※ 玉ねぎを入れる時は、薄切りにして、E.V.オリーブオイルで軟らかく、茶色く色付くまでじっくり炒め、じゃがいも、溶き卵と混ぜます。ピーマン、きのこ、ソーセージも合います。 ※ 暖かいものには野菜のトマト煮込み、冷めたものにはマヨネーズ・ソースを添えても、美味しいです。 ※ バゲットのサンドイッチにもぴったりです。 *木製で片側に取手の付いた専用の蓋 トルティジャの名前 トルティジャは、詳しく言うとスペインオムレツ (tortilla Española)、 じゃがいものオムレツ (tortilla de patatas)です。バターを溶かしたフライパンで溶き卵を寄せて半分に折り返し、真中が太く両端に向かって細いオムレツは、フランスオムレツ (tortilla Francesa) です。 メキシコのトルティジャは、とうもろこし粉を薄く丸く焼いた生地で肉、野菜、チーズを包んだタコスや、小さい三角形の生地を揚げたチップで、唐辛子とトマトのサルサや、アボガドのディップと食べます。 ヨーロッパでのじゃがいもの普及 大航海時代の1527年頃、南米ペルーからスペイン南部のセビリア港にじゃがいもがもたらされました。低温や痩せた土地に適合して、北部地方に栽培が広がり、高い栄養価が質素な食を補いました。 ヨーロッパ諸国にも徐々に広まったものの、フランスでは花が観賞用で、芋は毒性がある悪魔の食べ物と信じられ、食用になるのが遅れました。18世紀から19世紀は、じゃがいもの疫病の蔓延で飢饉が起こり、戦時中は穀物不足でパンの代用に食べられるようになりました。 じゃがいものトルティジャの起源 一世紀頃のローマ帝国時代には卵料理、16世紀初めには揚げた卵、の文献記述があり、この頃からスペインでもトルティジャという言葉が使われています。黄金世紀に食べられていた卵料理は、卵だけのオムレツや、ハーブ、ベーコン、チーズを入れたものでした。 じゃがいも入りトルティジャ誕生の、最も有名な伝説は、第一次カルリスタ戦争中(1833~36年)、スマラカレギ将軍が、北東部のナバラ地方で空腹を満たすために寄った質素な宿には、じゃがいもと卵しかなく、有り合わせでトルティジャが作られた、と言うものです。 丸ごとトルティジャの本 スペインで最も広く読まれている新聞 El País で、30年以上、美食ジャーナリストの、ホセ・カルロス・カペルさんの著書に、「Homenaje a la tortilla de patatas (じゃがいものトルティジャへのオマージュ(敬意)」があります。 295ページのハードカバー装丁は、卵の黄身の真黄色、帯は赤です(黄色と赤はスペイン国旗の色です!)。 トルティジャの伝統、じゃがいも、卵、オリーブオイル、塩について詳しく書いています。また、革新的な料理で世界をけん引するスペイン流に、トルティジャも進化していく、と強調しています。 […]

スペインのパン – ボカディジョ、パン・コン・トマテ、エンサイマーダ

スペイン料理
スペインのパン スペイン料理で世界に最も知られているのは、パエリアでしょう。でもスペイン人は毎日、米料理を食べるわけではありません。パエリアは元々、週末に海や山で、あるいはお祭りの日に、昼食にわいわい食べるものです。米の生産量は、世界12位前後の日本の10分の1以下で40位くらい、30位あたりのイタリアの約半分です。 スペインの主食はパンです。 スペインのサンドイッチ、ボカディジョ 今も昔も、スペイン人のお弁当と言えば、ボカディジョです。スペインのバゲットやpan de barraという、長めのパンを上下半分に切って具をはさみます。定番は生ハム、羊乳のチーズのスライス、その両方、あるいは、じゃがいものオムレツのトルティジャです。トルティジャの上にグリルしたピーマンが入ることもあります。遠足のお昼は、ほぼ全員がアルミホイルに包んで親が持たせてくれるボカディジョです。中には板チョコが丸ごと挟んである子もいて知らないとびっくりしますが、バターとチョコレートとバリっとしたパンはすばらしい組み合わせです。ソーセージのスライスのボカディジョもあります。あらゆるジャンルのお弁当がある日本と比べると、シンプルですが、スペイン人は飽きないようです。 バルではテイクアウトもできます。30年ほど前、ボカディジョ専門チェーンの店舗が沢山でき、豊富なバリエーションが人気でしたが、バルのボカディジョがすたれる事はありません。 パン・コン・トマテ もう一つの、人気のパンの食べ方が、パン・コン・トマテです。 カンパーニュパンなどをスライスし、網やグリルで焦げ目がつくほどしっかり焼いて、半分に切ったにんにくの風味をつけます。熟した中玉トマトを横半分に切り、パンにこすり付けてジュースをしみ込ませます。E.V.オリーブオイルをたっぷりかけ、塩をふります。カタルーニャ地方で良く食べますが(カタラン語で「パントゥマカ」)、スペイン中で人気です。生ハム、チーズ、仔羊肉のグリル、小魚とホタルイカのフリット、米料理、何にでも良く合います。レストランやバルで、完成したものがでてくることもあれば、自分で作るように、グリルしたパンと材料が別々に出てくることもあります。初めてなら、まずお手本を見せてもらって、手作りのプロセスも楽しみましょう。  パン・コン・トマテは朝食にもあり、特に南のアンダルシアとムルシア地方では、トーストしたパンの上に、すりおろしたトマトをスプーンですくってのせ、やや控えめにオリーブオイルと塩をふります。伝統的なやわらかくふかふかしたパンのモレテも好まれます。ホテルの朝食ビュッフェにも用意されていて、暑い夏の朝にもトマトの酸味が食欲をそそります。 バレアレス諸島・マジョルカ島のエンサイマーダ もう1つの名物パンに、マジョルカ島のエンサイマーダ(Ensaimada)があります。棒状になった生地をぐるぐる渦巻き状にして、オーブンで焼き上げ、ふわふわとした生地に白い粉砂糖が美しくかかっていて、生地にはたっぷりとラードを使っています。 起源説はいろいろですが、イスラム、ユダヤ、キリスト教の文化の融合がその由来と思われます。アラブのお菓子で使われていた羊乳バターとオリーブオイルは、キリスト教徒の手においてラードにとって代わりました。1492年にアラブ王国が消滅した時、イベリア半島にとどまるためには、キリスト教に改宗をするより他なかったアラブ人や、ユダヤ教徒に、食することが禁じられていた豚の脂を使ったエンサイマーダを、踏み絵のように食べさせたという逸話もあります。 スペイン家庭での肉消費量の内、豚肉は生肉では鶏肉についで2番目ですが、生ハムやソーセージの加工肉の80%は豚肉で、全体では豚肉が約40%、鶏肉の30%を上回ります。外食もあるので、豚肉の消費はかなりの量で、豊富なラードが使われてきました。 プレーンのエンサイマーダの他、カベジョ・デ・アンヘル(Cabello de ángel、天使の髪、そうめんかぼちゃの甘煮)、生クリーム、カスタード、チョコレート入りの甘いタイプ、アプリコット入り、ソブラサダ (Sobrasada)という、マジョルカ特産でパプリカ入りのしっとりしたソーセージの塩味のものもあります。直径8cmくらいのもの、直径14cmくらいのものから、直径30㎝くらいの切り分けるものまであります。 エンサイマーダは、2004年にIGP (Indicación Geográfica Protegida、地理的表示保護)に、菓子パンの部類で登録されています。EUが規定した地理的由来の品質・評価・特性があり、生産工程の一部が、一定の地理的領域で行われている、農産物を保護する制度です。 登録対象は、プレーンとカベジョ・デ・アンヘルの2つのみで、詳細な形状の表現があり楽しめます。 エンサイマーダ・デ・マジョルカ : 詰め物なし、重さは60gから 2kg。 エンサイマーダ・マジョルキナ : エンサイマーダ・デ・マジョルカと同じ生地に、エンジェルヘア (そうめんカボチャの果肉を砂糖と煮たもの) が入ったもの。重さは 100gから3kg。 形状はどちらも時計回りに2回転以上の渦巻きであり、表面は波状、金色、しっかりとぱりぱりで、つぶれやすいです。内部は柔らかく、しっかり凝集性が高く、弾力性はとぼしいため、内部のパイ生地がしっかり確認できます。焼きたての生地には甘い風味と香りがあり、底はしっとり滑らかで、どちらも、粉砂糖を振って白くしても良いです。生産の地理的領域は、バレアレス諸島に属するマヨルカ島のすべての自治体が含まれます。 エンサイマーダの作り方 材料は、水、砂糖、卵、酵母、強力粉、ラードです。 卵と砂糖、水と酵母をよく混ぜ合わせしばらくなじませたら、強力粉を加え、手にくっつかないくらいの弾力がでるまでミキサーか手でこねます。オイルを塗ったボウルに入れ1時間ほど発酵させたら、オイル塗ったテーブルの上に生地を広げ、薄く伸ばし、ラードを塗ります。できるだけ薄くなったらくるくると巻き、布巾をかけ30分ほど休ませます。生地を引っ張り伸ばし、オーブンペーパーの上に、隙間を開けて渦巻き状に置きます。常温で15時間くらい発酵させ、約180℃のオーブンで20~30分焼きます。冷めたら上からたっぷりと粉糖を振りかけます。 スペインのパン事情 スペインの美食家で、30年以上、スペインで最も広く読まれている新聞 El País の食のジャーナリストで、Instagramに10万人のフォロワーを持つ、ホセ・カルロス・カペルさんは、スペインにはおよそ315 種類のパンがあると見積もっています。 北欧、ドイツ、オーストリアのように、冷涼な国では茶色いパンが多く、ピレネー山脈北側のフランスでは、全粒粉、ライ麦粉、他の穀物もよく混ぜられます。質の良い小麦が栽培できる南欧では、軟らかく軽い食感の白いパンが好まれましたが、栄養価は下がります。 スペインではずっと、特にフランコ政権の間、ライ麦、大麦、ソバ、全粒小麦のパンは「貧しい人々の食べ物」と見なされていました。スペイン固有で、普通小麦の最古の原種の、白を意味するCandealと言うデュラム小麦は、栄養価が高く、その小麦粉で作るパンの品質が、国内最高評価の小麦です。これらのことから、かつて、レストランやバルで出てきたのは、外皮はなめらかに乾いていて、中は白く柔らかで目の詰まった、素朴で混じりけのない味わいのパンがほとんどでした。健康的な食事への関心が高まると、全粒粉パンも作られるようになりました。 20年ほど前から、パン屋の仕事が機械化され、伝統的な作業が簡素化されていきました。自然の材料のみで職人が手作りするパンは、人工添加物を使用したパンより味も香りもはるかに強烈で、数日経っても柔らかく美味しかったのですが、そういうパンはなかなか食べられなくなり、スペインのパンの消費量は大きく減少しました。先述のCandealデュラム小麦は、収量が低く収益性が悪いため、高品質にもかかわらず姿を消しつつあります。 近年、そうした状況に危機感をいだく生産者の間で、地中海の伝統的なパン文化を立て直そうとする動きが顕著です。オリーブオイルやワインに大きく後れを取っている、IGP(地理的表示保護)保護地理的表示の登録をする地方が出てきて、現在6つあります。Pan de Cea (2005、ガリシア)、Pan de Cruz de Ciudad Real (2009、カスティーリャ・ラ・マンチャ)、Pan de Pagès Català(2013、カタルーニャ)、Pan de […]

ガスパチョとサルモレホ

スペイン料理
スペインの冷たいトマトのスープ スペインで最もポピュラーな冷たいスープと言えば、ガスパチョです。 古くから伝わるトマトと野菜のスープですが、伝統的なレストランやバルだけでなく、モダンなレストランやカフェでも、メニューに載っているところがあります。デリではテイクアウト用の透明なカップに入れて売られていますし、スーパーやデパ地下で、牛乳のようにパック入りのものを買うこともできます。自分の家で料理するのも一般的です。 今や、世界中でその名前は知られるようになり、スペイン料理という枠を超えて、フランスや中南米などでも、オリジナルのガスパチョをレパートリーにしているシェフがいます。日本でも、検索すると、レシピが沢山出てきて、浸透ぶりがうかがえます。 スペイン映画から見えるガスパチョ スペイン映画界の巨匠、ペドロ・アルモドバル監督の、30年ほど前の出世作 「神経衰弱ぎりぎりの女たち」 という映画の中で、ガスパチョが出てくる場面が3回あります。まずカルメン・ラウラ扮する、不安とイライラをかかえた女主人公が、マドリッドの自宅のキッチンで、雑にトマトを切り、出来たばかりのガスパチョをミキサーから、いきなりぐいっと飲むシーンです。  そして、別の日に彼女の家に友人たちが集まっていると、事件が起こり、動揺した1人が、からからの喉をうるおそうと、あわてて開けた冷蔵庫にガスパチョを見つけ、これまた大きなピッチャーから直に一気飲みをするシーンです。 最後は、恋敵と捜査目的の2人の警察官が家に押し入って来て、彼らにガスパチョを振舞うシーンです。 この大胆さには圧倒されてしまいますが、実はこれは、スペイン人の生活の中でのガスパチョというものを、よく表しているかもしれません。 スペインの夏はとても暑い! ぐったりして、火を使う料理をするのは嫌だけれど、ガスパチョなら、トマト、きゅうり、ピーマン、玉ねぎ、にんにくを、水、オリーブオイル、酢と一緒にミキサーに放り込んで回すだけです。 仕事や子どもの送り迎えで時間がなくても、料理が面倒でも、短時間で作れる上、色の濃い野菜のビタミン、にんにくの滋養強壮効果、オリーブオイルの抗酸化作用などが得られます。 今で言う、地中海式ダイエットにも通じています。 招かれざる客に対してさえ、ガスパチョを振舞うとは、日本で言えば、お茶を出すような感覚の飲み物なのでしょう。 ガスパチョはレストランや自宅のテーブルに座って、スープ皿とスプーンで「食べる」ものとは限りません。コップで「飲む」ことができるくらいの、さらっとした濃度です。 そして、夜が更けるまで仲間とわいわい楽しむのがスペイン流で、長いスペインの一日の、栄養補給になります。 このような、手軽さと、スペインの気候風土にあった飲み口が、根強い人気の理由なのでしょう。 ガスパチョの起源 いろいろな研究を大筋でまとめると、古くはローマ帝国の時代に水に浸した古いパン粉のスープを食べる習慣がありました。イベリア半島で最後のイスラム王朝として、スペイン南部アンダルシア地方のグラナダを統治したナスル朝(1230年~1492年)の歴史的文書に、アラブ人がパン、油、酢だけのスープを野外で楽しんでいたと記されていました。イベリア半島の他民族の羊飼い、兵士、農民なども、乾いたパンを水に浸して手で潰し、にんにくを潰したものや、玉ねぎのみじん切り、油と混ぜて食べていました。 15世紀から始まる大航海時代の16世紀頃、中南米、特にメキシコとペルーから、トマトやピーマンの原種の唐辛子がスペインに入って来るようになると、それらも混ぜて食べました。 パンが焼かれたのはせいぜい週に1度くらいの時代には、パンは硬くなり、水分で柔らかくしなければ食べられなかったでしょう。大航海時代、アンダルシアの港湾都市セビリアが栄え、トマトやピーマンなど新大陸からの野菜はこの地にもたらされました。港町のウエルヴァや、コルドバ、マラガなどの周辺はワインの一大産地でしたが、当時はワインを安定化するのは難しく、酢(ワインヴィネガー)ができ多くあったと考えられます。そしてスペイン南部はオリーブの主要な産地です。 こうしてアンダルシア地方でガスパチョの原型が生まれたと言うのは、うなずけます。19世紀初頭には、質素ながら栄養価が高いガスパチョは、暑いアンダルシアの農民と日雇い労働者に欠かせないものでした。 以後、発展を遂げ、スペイン中で季節を問わず食べられる国民食になりました。パンはもはやメインの材料ではなく、入れずに作る、あるいはとろみをつけたい場合に少量入れる程度になっています。高級ホテルや星付きレストランなどでは、美しく盛り付けられたガスパチョが提供されています。 トマトの半分くらいの分量を、すいか、いちご、桃などの季節のフルーツに置き換えてつくるガスパチョのバリエーションも人気です。 もう一つの冷たいスープ サルモレホ ガスパチョとよく似た冷たいスープにサルモレホがあります。ガスパチョと同様、生まれたのはアンダルシア地方ですが、特にコルドバと言われています。違いは、材料がパン、トマト、にんにく、E.V.オリーブオイル、酢、塩だけで、ピーマン、きゅうりや水を入れない事。パンをたっぷり入れるので、スープというよりも、もったりとしたピュレ状で、スプーンやパンですくって食べます。 サクサクに揚げた茄子にソースのようにつけて食べてもとてもよく合います。トッピングは、ガスパチョが、刻んだ野菜とパンのクルトンを添えるのに対して、サルモレホは刻んだ固茹で卵と生ハムを散らし、オリーブオイルを回しかけます。  皆さんもぜひ、スペイン料理のレストランやバルで、食べ比べを楽しんだり、自分で食材やトッピングにアレンジを加え作ってみてください! ホームパーティーやイベントにもぴったりです。 ガスパチョのレシピ <材料(3-4人分)> ・完熟トマト                                   1 ㎏ / 8個 ・にんにく                                       1片 ・ピーマン                                    80g / 2個 ・玉ねぎ                                           40g  ・きゅうり (皮を剥く)            80~100g / 1本 ・酢                                                 25g ・E.V.オリーブオイル                     50ml ・塩                                                 小さじ1 ・氷                                                 8個 ・冷水                                             200ml <作り方> 洗ってざく切りにした、完熟トマト、ピーマン、きゅうり、玉ねぎと、皮を剥いたにんにく、ヴィネガー、塩をミキサーにかける。 […]

お家でも楽しめる!スペイン家庭の飲み物サングリア!

スペイン料理
サングリアはもともとスペインの夏に欠かすことのできない飲み物で、スペイン南部のアンダルシア地方が発祥とされています。サングリアは、あまり状態の優れないワインや余ってしまったワインの活用方法として工夫したことから始まった飲み物とされています。 サングリアの歴史は意外と古く、2000年前にローマ人がイベリア半島にやってきた時までにさかのぼります。当時は飲み水にバクテリアなどの細菌が発生し安全に飲むことが難しい状況でした。そこで、アルコール飲料を水に入れてバクテリアを退治するという考え方が生まれます。その為、最初のサングリアは水とワインにハーブやスパイスと混ぜたものであったと言われています。
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